建設業の許可を取得しようとした場合、必要な6つの要件があります。
◆建設業許可取得の要件◆
(1)経営業務の管理責任者がいること
(2)専任の技術者がいること
(3)請負契約に関して誠実性があること
(4)金銭的信用があること
(5)欠格要件等に該当しないこと
(6)適切な社会保険に加入していること
(6)の「欠格要件(欠格事由)」という言葉はあまり聞きなれないのではないでしょうか。
欠格要件とは、「(その許可を得る)資格がない」という意味であり、他のすべての要件を満たしていても、(5)の欠格要件(事由)に該当してしまうと、許可を受けることができません。
事業者様自身が当てはまらないからと見逃してしまうと困ることもあるかもしれません。
まずは建設業許可の欠格要件は何か、欠格要件に該当していないかどうかをしっかりと確認していきましょう。
建設業許可における欠格要件
まずは建設業許可の欠格要件は以下の通りです。
どれか1つでも該当したら許可はおりませんので、ご注意ください。
非常にざっくりと記載しましたので、後ほどいくつかを取り上げてわかりやすくご説明します。
◆建設業許可の欠格要件◆
1.許可申請書や添付書類で虚偽の記載または重要な事実の記載が欠けている
2.欠格要件対象者が1つでも該当する場合
①破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない
②心身の故障により建設業を適正に営むことができない者
③不正な手段により許可を受けたことなどで、その許可を取り消されて5年を経過しない(またはそれに関連する行為)
④不適切な施工や請負契約に関する不誠実な行為により、営業停止になり、その期間が経過していない
⑤営業禁止となり、その禁止の期間が経過していない
⑥禁固以上の刑を受け、刑の執行から5年を経過していない
⑦一定の法律により罰金の刑を受け、刑の執行から5年を経過していない
⑧暴力団員である(またはそれに関係している)、または暴力団でなくなった日から5年を経過していない
1は書類に関する欠格要件、2は人に関する欠格要件となっています。
2の②ですが、以前は「成年被後見人・被保佐人」であることが欠格事由とされていましたが、令和1年の法改正により「成年被後見人・被保佐人」であることが一律に欠格事由となるのではなく、「心身の故障により建設業を適切に営むことができない」のでなければ欠格要件には該当しないことになりました。
欠格要件の対象者
欠格要件に該当するかどうかを判断する対象は、
法人の場合
・許可を受けようとする法人
・役員等
・令3条の使用人(支配人及び営業所の代表者)
個人の場合
・許可を受けようとする個人事業主
・令3条の支配人(支配人及び営業所の代表者)
となります。
上記の役員等に該当するのは以下の通りです。
役員等に該当する方
・株式会社または有限会社の取締役
・指名委員会等設置会社の執行役
・持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)の業務執行社員
組合等の理事
・総株主の議決権の100分の5以上を有する株主
・出資の総額の100分の5以上に相当する出資をしている者
・相談役
・顧問
監査役・執行役員・監事等は役員等には該当しません。ただし、取締役と同等以上の支配力を有すると認められる者は該当する場合がありますのでご確認ください。
欠格要件解説:破産者で復権を得ない者
欠格要件には「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない」とあります。
勘違いしやすいのですが、破産をしていると許可が取れなくなるわけではありません。
破産をしても「復権を得れば」欠格要件には該当しないのです。
では、「復権を得る」とはどういうことでしょうか?
破産した場合、一般的には裁判所に「破産手続き開始の申立て」を行います。
その後破産手続きを終えて、免責が認められた、つまり借金の返済が免除されると認められたときに復権を得ることができるのです。
欠格要件である「破産して復権を得ない者」に該当しないことは、本籍地の市町村で発行できる身分証明書で証明することができます。
欠格要件解説:心身の故障
欠格要件には「心身の故障により建設業を適正に営むことができない者」とあります。
令和1年の法改正により、それ以前では欠格事由であった「成年被後見人・被保佐人」が、令和1年からは「心身の故障により建設業を適切に営むことができない者」と変更になりました。
つまり、建設業を適正に営むために必要な認知、判断や意思疎通が適切に行うことができる場合、「成年被後見人・被保佐人」であっても欠格事由に該当しないということです。
建設業を適正に営むために必要な認知、判断や意思疎通が適切に行えるかどうかは、回復の見込みや医師の所見を考慮して、医師の診断書等で証明することになります。
欠格要件解説:不正な手段により許可を受けた
「不正な手段により許可を受けたこと」に関する欠格要件は3つあります。
簡単に述べますと
・不正な手段で許可を受けたことなどで建設業許可を取り消されて5年経過していない
・不正な手段で許可を受けたことなどで建設業許可を取り消されることを避けるために廃業の届出をし、その届出の日から5年経過していない
・不正な手段で許可を受けたことなどで建設業許可を取り消されることを避けるために廃業の届出をした法人や個人で、取り消し処分の通知があった日以前60日以内に、法人の役員等・令3条の使用人、または個人の令3条の使用人であったもので、当該届出の日から5年を経過しない
この3つとなります。
3つ目はちょっとわかりづらいですね。建設業許可の取り消し処分の通知が来て、許可が取り消されそうだから取り消される前に一旦廃業しちゃえ!と廃業した会社(個人も含む)に取り消し処分の通知がくる前60日以内に役員等や令3条の使用人でいた人は欠格事由に該当しますよ、ということです。
欠格要件解説:禁固以上の刑・罰金刑
法令に違反して刑を受けたとき、欠格要件にあたる場合が2つあります。
・禁固以上の刑を受け、その刑の執行が終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
・一定の法律に違反したことで罰金の刑を受け、その刑の執行が終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
禁固以上の刑は、死刑・懲役・禁固が該当します。
欠格要件解説:暴力団員
平成27年の法改正によって建設業者からの暴力団排除がさらに徹底されています。
・暴力団である
・暴力団でなくなった日から5年経過していない
・暴力団員等にその事業活動を支配されている者
は欠格要件となっています。
まとめ
建設業許可における欠格要件についてご理解いただけたでしょうか?
申請者だけでなく、対象者1人が1つでも欠格要件に該当してしまうと許可の取得が遠のいてしまいますので、しっかりと確認してスムーズな申請を行いましょう。