許可の更新時に事業者様に副本の有無をお伺いすると、副本を紛失してしまっている事業者様、または以前頼んでいた行政書士から副本を受け取っていない事業者様が稀にいらっしゃいます。
毎年の経営事項審査で行政書士に副本を預けたままにしている事業者様もいらっしゃるのではないでしょうか?
兵庫県の産業廃棄物収集運搬業の許可の申請では正本副本の2部、兵庫県の建設業の許可も正本副本の2部を提出する必要があります。
そして、申請に必要な書類一式を行政に提出すると、副本は受領印を押されて申請者に控えとして返されます。
一見、控えのためだけにあるかのような副本なのでしっかりと保存しなくても問題なさそうに見えますが、実は大事な役割を持っています。
今回は副本の重要性についてご説明いたします。
正本と副本の違い
産業廃棄物収集運搬業の許可申請を例に考えてみましょう。
収集運搬の許可を受けるには大きく分けて
・許可申請書
・添付書類
の2種類を用意する必要があります。
許可申請書では事業者様がどこで、どのような人達が、どのような形態で事業(収集運搬)を行うかを記載します。
添付書類では、事業者様の住民票や納税証明書、定款の写しなどの証明書等を用意することになります。
申請書と添付書類を集め、最終仕上げとしてこれらをセットにし、正本と副本を用意して窓口に提出することで申請が可能になります。
この正本と副本、2つの大きな違いは公的書類が原本であるかどうか、です。
正本では、添付書類として用意する住民票や納税証明書、登記されていないことの証明書などの公的書類は取得日から3か月以内のものを添付しなければなりません。
必ずコピーではなく役所等で取り寄せた原本をつけましょう。
ただし、定款や収集運搬の講習会修了証などは正本でも写し(コピー)をつけてください。
正本は提出したら手元に返ってこないため、修了証を原本で提出しないようお気をつけてください。
これらを兵庫県の場合はA4のファイルに閉じ、指定された見出しを付ければ正本のできあがりです。
正本に間違いがないかチェックしたあとにすべてをコピーして、副本用のA4ファイルと見出しをつけたものが副本です。
正本とは違い、公的書類もコピーしたもので構いません。
このようにして正本と副本を作成します。
次に、なぜ副本を作る必要があるのか、その重要性についてご説明します。
副本と受領印の役割
行政の窓口に申請書類一式を提出すると、問題がないか確認を受けたあと、副本に受領印を押して返してもらえます。
この時点では無事申請の受付を済ませた、といったところでしょうか。
許可が出るかどうかはまだ確定していないのでお気を付けください。
また、郵送で申請書類を提出し、受領印の押された副本を郵送で返送してもらう際は、返送用レターパックや副本が必要になりますので申請時に一緒に郵送しましょう。
さて、この受領印の押された副本はいったい何のためにあるのでしょうか?
主に以下の4つが副本の大きな役割です。
①申請の控え
②変更の有無を調べる
③経審での提出書類
④更新時の許可の証明
①申請の控え
特に行政書士に依頼して許可の申請をした事業者様は、控えがないと許可証が来るまでは本当に申請が済んだのかどうか不安になることもあると思います。そのような場合は、申請したら副本を渡してほしいと行政書士に伝えると良いでしょう。
②変更の有無を調べる
建設業の許可を受けた事業者様は、許可の申請時に申告した内容から重要な変更があった場合、2週間以内に変更の届出をすることが義務付けられています。例えば経営業務の管理責任者や専任の技術者が退職した場合等です。
変更がないかチェックしたり、変更の届出を出す際に、許可の申請時の情報を参考にしながら届出を作成すると非常にスムーズに進みますので、必ず副本は保存して置きましょう。
③経審での提出書類
建設業の許可を取られた事業者様によっては、公共工事を受注するために経営事項審査を受けることもあるかと思います。
その際に必要な書類の1つとして現在有効な建設業許可申請書の副本があります。
一度建設業の許可を取得すると次回更新まで5年間ありますので、今は公共工事をお考えでない事業者様もしっかりと副本を保存しておくことをおすすめします。
④更新時の許可の証明
一度取得した許可を更新する際には、更新の申請が必要となります。
行政には標準処理期間という、手続きを始めてから許可がもらえるまでだいたいどのくらいの期間かかるのかが定められており、兵庫県の建設業許可の更新ですと申請をしてから約30日から45日、産業廃棄物の収集運搬の許可には約45日(実際には閉庁日等の関係で2か月程度)と示されています。
例えば、許可を取っている事業者様の許可の有効期間が切れてしまうので更新の申請をした場合、約45日後に次の許可証が届くまではその事業者様が本当に許可を持っている事業者なのか外部からは確認が難しくなってしまいます。
コンプラ意識が強くなっている昨今では、許可の更新が確認出来てない事業者には発注できない会社もあるでしょう。
しかし、受領印の押された更新申請の副本があれば、許可業者がちゃんと更新の手続きをしたことが証明されますので、次の許可証を受け取っていない事業者に発注者側も安心して発注することができます。
このように更新の申請の際には更新申請書の副本が許可の証明として非常に重要となってきます。
まとめ
副本と受領印の重要性について、ご理解いただけたでしょうか?
控えとして以外にも役割を担っている副本ですが、地域によっては受領印が必要な場合は副本を用意してくること、のように申請に副本が必須でない地域もあるようです。
その場合でもしっかりと副本を作成し、受領印をもらって保存することが大切です。