建設業許可における財産的基礎とは?

建設業

「資本金が500万円以上ないと建設業許可取れないよね?」と事業者様からご質問いただくことがあります。

確かに建設業許可には6つの要件があり、そのうちの1つに「財産的基礎」の要件があります。

建設業許可取得の要件

(1)経営業務の管理責任者がいること

(2)専任の技術者がいること

(3)請負契約に関して誠実性があること

(4)財産的基礎があること

(5)欠格要件等に該当しないこと

(6)適切な社会保険に加入していること

しかし、「資本金」が「500万円以上」絶対に必要かと言われますと、必ずしもそうでないのでご安心ください。

それでは今回は(4)財産的基礎があることについてご説明させていただきます。

 

財産的基礎とは?

建設業許可を取得するためには、建設業の請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有していることが必要です。

それでは財産的基礎(金銭的信用)とはなんでしょうか?

建設業許可の要件である財産的基礎とは、定められた金額以上の資金を持っている、もしくは調達能力がある、ということをさします。

建設業を営む上で資材の購入費用や労働者の募集費用、工事着工の準備資金など、ある程度の資金必要です。そのため、許可を受けるべき建設業者の基準として最低限その資金を有していることが要件となっています。

財産的基礎は、一般建設業の許可と特定建設業の許可で基準が変わります。

1つずつ具体的にご説明いたします。

 

一般建設業の許可を受ける場合

一般建設業許可の場合、いずれかに該当することで財産的基礎の要件を満たします。

  1. 自己資本が500万円以上であること
  2. 500万円以上の資金調達能力があること
  3. 許可申請直前の5年間で許可を受けて継続して営業した実績があること

 

A.自己資本が500万円以上

自己資本の額は、法人の事業者様においては貸借対照表の純資産の合計額です。申請の直前事業年度の決算書を確認し、純資産合計が500万円以上あれば要件をクリアしています。

また、開業したばかりで初年度の決算を迎えていない場合、資本金の額が500万円以上であれば大丈夫です。もし建設業許可を取得する会社の設立を考えていらっしゃる事業者様は、資本金500万円以上にして設立されるのをおすすめします。

個人事業主の事業者様の場合、直前の決算書の「期首資本金+事業主借+事業主利益―事業主貸」が500万円以上になっていれば要件を満たしています。

 

B500万円以上の資金調達能力

自己資本が500万円以上に満たなくても、500万円以上の資金調達能力があることを客観的に証明することで要件をクリアすることができます。

具体的には以下のいずれかの証明書で資金調達能力を証明してください。

 ア)金融機関の預金残高証明書

 イ)融資証明書

残高証明書は申請日前1か月以内のものが必要です。1つの口座で500万円の残高証明書を取得できれば簡単なのですが、複数の口座を合計して500万円以上の残高を証明する場合、必ず同じ日付で取得することが重要です。

 

C.許可申請直前の5年間で許可を受けて継続して営業した実績があること

すでに一般建設業許可を取られている事業者様に対して、許可の更新申請の場合は改めて財産的基礎の要件を証明する必要がないということを示しています。

 

特定建設業の許可を受ける場合

特定建設業の場合、すべてに該当することで財産的基礎の要件を満たします。

  1. 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
  2. 流動比率が75%以上であること
  3. 資本金の額が2,000万円以上あり、かつ自己資本の額が4,000万円以上であること

 

決算書を読み解かなければならないので少し難しいのですが、以下でご説明します。

 

A.欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと

「欠損」というのは、つまり赤字が出ている状態のことです。

黒字である事業者様は条件を満たしていることは明白です。

赤字でありましても、例えば資本金が2,000万円の場合、赤字(損失)の額が、20%である400万円以内でしたら条件を満たします。

 

◆欠損額の計算方法

法人の場合

欠損比率={繰越利益剰余金-(資本剰余金+利益準備金+繰越利益剰余金を除いたその他利益剰余金}÷資本金×100 < 20

個人事業主の場合

欠損比率={事業主損失-(事業主借勘定-事業主貸勘定+利益留保性引当金+準備金}÷期首資本金額×100 < 20

上記の方法で計算し、出た数値が20未満であれば要件を満たしているということになります。

 

B.流動比率が75%以上であること

流動比率は以下の計算式で求められます。

流動比率の数値が大きいと、急な資金繰りに対応できる安全性の高い企業だと判断されるので、この数値は日々意識しておくのが大切です。

 

C.資本金の額が2,000万円以上あり、かつ自己資本の額が4,000万円以上であること

資本金ですが、個人事業主の資本金は期首資本金の額となります。

自己資本の額は、法人の事業者様においては貸借対照表の純資産の合計額です。

個人事業主の事業者様の場合、直前の決算書の「期首資本金+事業主借+事業主利益―事業主貸」が自己資本の額になります。

 

特定建設業許可の場合、A~Cのすべての条件を満たすことで財産的基礎の要件をクリアすることになります。さらに、取得後もこの条件を継続させる必要があります。1度許可を取得しても、A~Cのどれかが欠けてしまうと許可の取り直しになりますので、大きな赤字を出さない堅実な事業が重要になります。

 

まとめ

決算書を見て、条件を満たしているのか確認するのは慣れていらっしゃる方以外にとってはなかなか骨の折れる作業です。難しくてわからない場合は税理士の先生や建設業を専門にしている行政書士等の専門家に相談するのも良いでしょう。