建設業許可を取得すると、500万円以上の大きな工事を請け負うことができるようになります。今まで以上に仕事を受注しやすくなり、事業の拡大も望めます。
また、公共工事の入札にも参加できるようになることも大きなメリットです。
その一方で、建設業許可業者になると様々な義務を負うことになります。違反した場合、厳しい処分を受ける場合もあるでしょう。建設業許可を受けたら、どのような義務が課せられるのかを正しく認識し、法令を遵守することでリスクを減らしましょう。
建設業許可業者の主な義務
建設業の許可を受けると、建設業法に定められた義務が課せられます。その中でも代表的な義務のいくつかをご紹介します。
それでは1つずつ内容を確認していきましょう。
許可行政庁への届出義務
建設業者様は、一定の事項について変更が生じた場合、許可行政庁に変更届を提出しなければなりません。この変更届は、ほとんどの場合提出期間が定められていますので、変更があった際はすぐに確認して、期限内に提出するようにしてください。
この変更届が出されていないと、更新許可等を受けることができませんので、ご注意ください。
届出事項 | 届出の期限 | |
1 | 決算報告(決算変更届) | 毎事業年度終了後、 4か月以内 |
2 | 経営業務の管理責任者の変更 | 2週間以内 |
3 | 専任技術者の変更 | |
4 | 令3条の使用人の変更 | |
5 | 社会保険加入状況の変更 (変更内容が従業員数のみの場合は除く) | |
6 | 経管又は専技が欠けたとき | |
7 | 欠格要件に該当したとき | |
8 | 商号又は名称の変更 | 30日以内 |
9 | 営業所の名称、所在地、業種の変更 | |
10 | 営業所の新設、廃止 | |
11 | 資本金額の変更 | |
12 | 役員等、代表者(申請人)の変更 | |
13 | 支配人の変更 | |
14 | 廃業(廃業届の提出) |
決算変更届は毎年必ず提出しなければなりません。
また、使用人数、令3条の使用人の一覧表、定款又は社会保険の加入状況(従業員数のみ)に変更があった場合は、決算変更届と同時に必要な書類を添付して手続きを行います。
標識の掲示義務
建設業者様は、公衆の見やすい場所に標識を掲げなければなりません。
この標識の掲示義務には2種類あります。
①建設工事現場での掲示義務
しっかりと許可を受けた建設業者によって、建設工事がされていることを明示するため、所定の事項を記載した標識を掲げる必要があります。
②店舗(本店・支店・営業所)での掲示義務
建設業の許可票を店舗に掲示する必要があります。金色の許可票(いわゆる『金看板』)を掲げる建設業者様が多いですが、サイズと所定の記載内容が守られていれば、材質には決まりはありません。
帳簿の備え付けと保存、営業に関する図書の保存義務
建設業者様は、請け負った建設工事ごとに記載事項等が発生した場合、帳簿を記載しなければなりません。
帳簿の保存期間は、建設工事ごとに建設工事の目的物の引渡しをしたときから5年間、発注者と締結した住宅の新築工事に係るものは10年間です。
また、完成図や打ち合わせ記録等の営業に関する図書の保存期間は10年間です。
帳簿には定められた様式はありません。しかし、記載事項は細かく定められているので、記載事項を把握し、記載漏れがないようにしましょう。
契約締結に関する義務
建設工事の発注者と受注者間で行われる請負契約の締結に関して、契約の適正化を図るため、着工前書面契約の徹底や、契約書面への記載必須事項の記載といった義務があります。
また、力関係を利用して不当に低い請負代金での契約や、不当に使用資材等を強制的に購入させる行為も禁止されています。
工事現場における施工体制等に関する義務
①工事現場への技術者の適正な配置義務
建設業許可を受けた建設業者様は、元請・下請に関わらず、施工現場に主任技術者又は監理技術者を配置しなければなりません。
主任技術者とは、その建設工事に関する一般建設業許可の専任の技術者の要件を満たす人です。
また、監理技術者とは、その建設工事に関する特定建設業許可の専任の技術者の要件を満たす人です。
②一括下請負の禁止
建設業者様は自らが請け負った建設工事を下請業者に一括して請負わせること、または他社から建設工事を一括して請け負うことは禁止されています。
③特定建設業許可業者に関する義務
特定建設業者が一定の工事を請け負う場合には、施工体制台帳や施工体系図の作成しなければなりません。
また、建設工事に係る全ての下請業者に対する法令遵守の指導や法令違反を是正しない下請業者の行政庁への通報の義務も課されています。
下請代金の支払いに関する義務
①下請代金の支払期日に関する義務
建設業者様は注文者から請負代金の支払い(出来高払い又は竣工払い)を受けた日から1ヶ月以内に、当該工事を施工した下請業者に対して、下請代金を支払わなければなりません。
②特定建設業許可業者に関する義務
ア)下請代金の支払期日の特例
特定建設業許可業者様は、「上記①の期日」または「下請負人(特定建設業許可業者または資本金額4,000万円以上の法人以外)からの引渡し申出日から起算して50日以内」のいずれかの早い日に下請代金の支払わなければなりません。
イ)割引困難な手形による支払の禁止
特定建設業許可業者様は、下請代金の支払いを一般の金融機関で割引を受けることが困難と認められる手形で行うことは禁止されています。
まとめ
許可を受けた建設業者様に課せられる代表的な義務についてご紹介いたしました。
建設業者様には、許可業者としての義務を果たし、これまで以上に法令遵守を徹底していただきたいと思います。