法人の事業者様が建設業許可の申請をする際に、申請書と一緒にいくつかの書類を提出する必要があります。そのうちの1つが「定款」です。
さて、その「定款」ですが、建設業許可を取得するためには定款の事業目的に取得したい建設業種が読み取れる文言が記載されてなければなりません。
今回は建設業許可申請における「定款」の「事業目的」についてご説明いたします。
定款とは何か
そもそも「定款」とは何なのでしょうか?
定款とは、その会社の基本情報や指針が記載され、「会社の憲法」と呼ばれているものです。会社を設立する際は必ず定款を作成し、公証人から認証を受けなければなりません。
定款には、発起人の氏名・住所や、資本金、事業目的等の重要事項が記載されており、様々な場面で提出が求められます。建設業許可や産業廃棄物収集運搬の許可といった許可申請の際や、法人の口座を開設するとき、補助金や助成金の申請を行うとき、などです。
行政や金融機関によっては、定款の事業目的等の文言を細かくチェックして、どんな事業を行おうとしている会社なのかをしっかり確認していることもあります。
1度定款を作成してしまうと変更するためには時間と費用がかかってしまうため、定款を作成する際は、実際に行う事業の他にも、将来行おうと思っている事業や取得を考えている許認可の事業に関する文言をあらかじめ事業目的に盛り込んでいくことが大切です。
建設業許可申請のためには事業目的に何を書けば良いか
建設業を営もうとするのであれば、必ず建設業に関する文言を記載しましょう。
行おうとしている事業が確定しているのであれば、「管工事業の請負及び施工」「電気工事業の請負及び施工」といったように、業種名+請負及び施工と記載するのが良いでしょう。
今後全ての建設業を行う可能性がある場合、29業種全てを「○○工事業」と1つ1つ記載しても構いませんが、29個もあるので少々不格好な定款になってしまうかもしれません。
「建築・土木工事の請負及び施工」と包括的に記載すれば建設業全29業種を網羅し、建設業の事業目的として無難です。
包括的な事業目的の例
定款の事業目的に記載する文言 | 事業目的から読み取れる建設業種 |
土木・建築工事の請負及び施工 | 建設業全29業種を網羅した事業目的 |
建築工事の請負及び施工 | 建築系の建設業種 建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、熱絶縁工事、建具工事、解体工事 ※行政庁によっては対応基準が異なります |
土木工事の請負及び施工 | 土木系の建設業種 土木一式工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、鋼構造物工事、舗装工事、しゅんせつ工事、塗装工事、水道施設工事、解体工事 ※行政庁によっては対応基準が異なります |
設備工事の請負及び施工 | 電気工事、管工事 ※行政庁によっては対応基準が異なります |
上記は包括的な事業目的の一例です。しかし、建設業許可を申請する行政庁によっては、この文言では○○工事を行っていると読み取れない、と受け付けてもらえない場合もあります。
現在行っている事業や、将来必ず行う事業に関しては包括的な文言ではなく、具体的に記載するのが良いでしょう。
例えば、「電気工事」を主力で行っている会社ですが、将来「火災報知機の設置工事」も行おうと思っている。もしかしたら他の建設業種の工事も行うかもしれないというような場合、以下のような定款を作成します。
(目的)
第●条、当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1.電気工事の請負及び施工
2.消防施設工事の請負及び施工
3.土木・建築工事の請負及び施工
4.前各号に附帯する一切の事業
このように、ある程度の具体性を持った定款ですと、どんな会社なのかが伝わりやすいです。
建設業以外の事業目的について
建設業を行う事業者様の定款を作成する際に注意したいのが、建設業の他に違う業種の事業を行う可能性があるかどうかです。
ここでは建設業と関係の深い「産業廃棄物収集運搬」と「古物商」についてご紹介します。
産業廃棄物収集運搬
建設業者様の中で特に多いと感じるのが、産業廃棄物の収集運搬を行っている事業者様です。
下請け業者として現場に入った場合、そこで出た産業廃棄物を処理場に運ぶには「産業廃棄物収集運搬許可」を取得していなければなりません。
現場で出たゴミを運搬してくれる下請け業者様は重宝されるため、あとから収集運搬の許可を取得される建設業者様も多いです。そのため、建設業を営む事業者様はあらかじめ事業目的に産業廃棄物収集運搬に関する文言を入れておくのがおすすめです。
1.産業廃棄物処理業
古物商
解体工事業を行っている事業者様が、解体する家屋の電化製品や家具等の不用品を買い取って売却する場合、「古物商許可」を取得しなければならないため、古物商に関する文言を入れておくのが良いでしょう。
1.古物の売買
まとめ
今回は建設業許可申請における定款の事業目的についてご説明しました。
定款の事業目的は会社の方向性の基礎となる大切な部分ですが、多くの事業者様は他の会社の定款を滅多に目にすることがないのが実情です。どうしても自分で作成するのが難しい場合は専門家に頼むのも良いでしょう。